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自動車用レザーシリーズの第五弾として、今回はメルセデスベンツの

デジーノ(designo)など主にAMGに設定されているレザーを見ていきます。

デジーノとは

メルセデスベンツのデジーノとは、BMWで言うところのインディビジュアル(Individual)のことで、通常のオプションよりもさらに厳選された素材を提供しているカスタマイズプログラムのことです。BMWのインディビジュアルがMモデルを中心に展開されているように、メルセデスベンツのデジーノもAMGモデルが中心となります。

他のベンツとは違った目を引くボディカラーにしたい、あるいは車内に侘びさびを感じられるようなウッドパネルを設えたい、さらにそのウッドと相性の良いレザーを揃えたい場合など、デジーノでないと応えられないニーズは少なくありません。

デジーノレザーとは

そんなデジーノプログラムで用意されているレザーが総じて「デジーノレザー」と呼ばれており、種類も豊富です。

たとえば、拡大すればびっしりと毛穴が確認できる

大きなシボが特徴の落ち着いた砂色もあれば、シボは抑えられつつ毛穴も埋まり気味で、

沸き立つような赤色もあります。

銀面の表情は両者で全く異なっていますが、以前の記事でも触れましたように、これくらい銀面が残っていれば自動車業界ではフルグレインレザーと呼んでも問題ありませんし、さらに柔らかければナッパレザーでも通用します。もちろん、ベンツの吊し車両ではまず見られない質感のレザーです。

レザーの表面にぽっかりと開いた毛穴について

次の画像をクリックして最大限に拡大していただきたいのですが、

こちらも先ほどの毛穴がびっしりと確認できたレザー同様、デジーノレザーの中でも最も銀面の風合いを残しているレザーの一つです。

これだけ毛穴が開いていると、「水をこぼしたらどうなるの」とか「雨で濡れた衣服に色が移るのではないか」、あるいは「直射日光で色が飛んでしまうのではないか」等、気になる点もあるかと思います。

しかし、それらは全て心配ご無用です。

毛穴がどれだけ開いていたとしても、毛穴の奥深くまでミクロン単位でウレタンの膜が張られているからです。毛穴の断面の繊維質の部分にもウレタンが貼られています。色止めを主たる目的とした自動車レザー専用のウレタンなので、家具用レザーに用いられるウレタンよりも耐久性を備えていますし、シートに座ってレザーが伸縮すれば、ウレタンも追従して伸縮します。そういう特殊なウレタンの膜で保護されています。

そしてこれは毛穴が開いていようがいまいが、そしてデジーノレザーであろうがなかろうが、自動車用レザー全般で行われている処理となります。こういう処理がなされずに少し汗ばんだだけでレザーの色がシャツに移ってしまったとなれば、そのようなレザーは現在の自動車業界では生きていけません。

レザーの手入れでやってはいけないこと

このように、自動車用などミクロン単位でウレタンの膜が張られているレザーの場合、それを想定した手入れをしないといけません。といっても特に堅苦しい約束事などはなく、ウレタンの存在を意識していればまず大きな失敗をすることはありません。タンナーの方が絶対にやめて欲しいと言っていたのは、

激落ちくんなどのメラミンフォームのスポンジでごしごしと擦ることくらいです。

食器洗いでこのメラミンスポンジを使ったことがある方には目新しい話ではないと思いますが、例えば、

タッパーをこの

メラミンスポンジと水だけで洗うと

簡単に傷が付いてしまいます。絵に描いたような

研磨傷です。メラミンスポンジをコンパウンドと呼ぶ人もいるように、これは研磨剤でもあるので、少々硬めの合成樹脂でも簡単に傷つけてしまいます。

仮に自動車用レザーをごしごしとメラミンスポンジで擦った場合、確かに汚れは落ちるかもしれませんが、ウレタンの膜にもダメージを与えることになります。そうすると、いくら見た目が綺麗になったとしても、そのレザーが工業製品として本来有していた耐摩擦性や耐候性なども損なわれてしまい、劣化を早めることにもなりかねません。

レザークリーニングでスポンジを使う場合には、メラミンフォームやハードスポンジではなく、少なくともプラスチック類を傷つけない程度の柔らかいスポンジを使ったほうが、長くレザーと付き合っていけるかと思います。

セミアニリンとナッパについて

これも以前の記事で触れましたが、メルセデスベンツにはセミアニリンとナッパが並行して存在しています。真面目に考えれば不思議な話です。

柔らかいフルグレインレザーにセミアニリン仕上げが施されてあれば、それはセミアニリンレザーであると同時にナッパレザーでもあります。自動車用レザーの場合は特に、セミアニリンレザーとナッパレザーに実質的な差がない場合が目立ちます。だからこそ逆に気になる話です。

同じ一台の内装でナッパレザーとセミアニリンレザーが並存するメルセデスベンツ車といえば、

CLS63AMGが挙げられます。フルレザー仕様の場合、ダッシュボードがナッパレザーで、シートがセミアニリンレザーとなります。

こちらのまずダッシュのナッパレザーを拡大すると、

このようになり、次にシートのセミアニリンレザーを拡大すると、

このようになります。

見た目はどちらも同じでタッチ感もやはり素晴らしく、仮にこのナッパとセミアニリンが間違ってあべこべに貼られていたとしても、「あれ、このシートはセミアニリンじゃなくてナッパだね」などと指摘できる人はおそらくいないことでしょう。

それぞれが貼られる部位から考えると、このCLSのナッパについては紫外線対策や熱対策に重点が置かれ、セミアニリンについては耐摩耗性が強化されているはずです。しかし、部位ごとにきっちり厚さを揃えてあべこべに貼られた場合、それに気づけるかとなると相当に難易度は高そうです。

メルセデスベンツUSAなど海外公式サイトでは、デジーノレザーは南ドイツ産の原皮を使ったナッパレザーであり、セミアニリン仕上げが施されていると明記されています。この時点で、ナッパレザーとも呼べるし、セミアニリンレザーとも呼べます。

そのため、ベンツがこの二種類のレザーにどのような違いを見いだして並存させるに至ったかは全くわかりません。

チューナーが使うレザー

せっかくメルセデスベンツを取り上げるので、チューナーのコンプリートカーも見てみます。といっても、コンプリートカーで独自採用されているレザーを目の当たりにできる機会などほとんどないので、最近とても注目を集めている

ファブデザインの

ジェットストリームSLS AMGロードスターを見てみます。このジェットストリームのシートに使われているレザーは

このようになっていました。毛穴のパターンから見てこれは牛革ではなく、おそらくペッカリーかそれに近い豚系のようです。

「カーボンの魔術師」がマンソリーなら、「色彩の魔術師」がファブデザインだと勝手に思っているのですが、さらに素材でも一風変わった路線を行っているのでしょうか。レザー視点で見ると改めて興味を惹かれるチューナーです。

デジーノレザーの供給元タンナーはどこか

デジーノの供給元タンナーについては、全然わかりません。デジーノ以外の標準的なレザーであれば、バーダー(BADER)社その他から供給を受けているかとは思います。

自動車用レザー分野で断トツ世界一の規模を誇るタンナーは米国のイーグルオタワ(Eagle Ottawa, LLC)で、ここは本当に断トツなので米国大統領が視察に来ることもあれば、工場から工場へとヘリコプターで移動することもあります。二番手にはやはり米国のガーデンステーツ(GST AutoLeather)が控えます。業界三番手はミドリホクヨーとバーダー(BADER)がしのぎを削っていますが、ミドリホクヨーはレクサスFLAに採用された最上級レザー「ファッシーナ」から大量生産車の各種レザーまで幅広く扱っているのに対し、バーダーは高級車市場に軸足を置いています。

レクサスが立ち上げられる際、各パーツ同様にレザーでもコンペが行われましたが、コンペに勝って採用されたのがバーダーでした。日本車にバーダーということでやや驚きをもって受け止められたようですが、高級車市場という切り口で考えるなら、もっともな進出です。

もしかするとデジーノもバーダーかもしれませんが、これについては情報が掴めませんでした。

さいごに

メルセデスベンツはかつてCL63AMGにのみアルパカセミアニリンレザーを設定していました。わざわざアルパカと銘打つようなレザーは、他のメーカーではまず見られない設定です。また、上述のファブデザインのペッカリーにしてもやはり興味深い選択肢です。

メルセデスベンツ関連のレザーを見ていると、ともすると他のメーカーにも波及しそうな試みが散見されるので、レザー視点でも今後も目が離せないメーカーだと考えています。また、今度はどのような意表を突いたレザーが登場するのか、その飛び道具的な設定にも期待してしまいます。

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    • しんちゃん
    • 2016年 2月 26日

    MBにオプション設定されているデジーノレザーについて詳しい情報をお報せくださり有難うございました。
    最後までよく分からなかったのですが、人工皮革でなく本革なのですね?
    ただし牛革か豚革か素材は不明なのですね? お教え頂けると幸いです。大橋拝

      • ultimative
      • 2016年 2月 27日

      コメントありがとうございます!

      デジーノについては人工皮革はなく、全て本革です。そして現状ではデジーノに使われるレザーは全て南ドイツ産の牛革であり、その全てがセミアニリン仕上げを施されたナッパレザーとなります。つまり、セミアニリンレザーであると同時に、ナッパレザーです。

      と、本国サイトで公式に説明がなされているのですが、CLSのようにセミアニリンとナッパが区別されていることがあり、これはどういう理由で区別されているのかがわかりません。

      毛穴のパターンから判断して牛革ではなく明らかに豚系だったのは、ベンツ純正ではない外部チューナー「ファブデザイン」の車両となります。今のところ純正で豚系は見たことがありません。

      ということで、デジーノとそれ以外のレザーとが区別しづらい記事となっていて申し訳ありません!

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