【マツダ超(KOERU)のデザイン】

  1. マツダ(MAZDA)

今回の東京モーターショーでは、マツダからは二台のコンセプトカーがお披露目されました。一つは既に記事にしたRX-VISIONで、もう一台が

超(KOERU)です。

マツダブースのコンセプトカーはRX-VISIONとコエルの二枚看板となっていましたが、コエルのほうが明らかに市販化が近いことを感じさせてくれます。

写真を撮っていた方々も、「これ市販されるんじゃない?」といった様子です。気のせいかもしれませんが、

そういう意識での撮影がおこなわれているようでした。

このコエルは先のフランクフルトショーでワールドプレミアされており、日本に飛び込んで来たニュースの中には、「次期CX-9か!?」といったフックがかけられたものもありました。

しかし、実際に目の辺りにすると、CX-9ほどのサイズ感はありません。

公表されているコエルのサイズは

全長4,600mm
全幅1,900mm
全高1,500mm

となっています。

一般的に車格は全長に準ずるので、このサイズから市販でのサイズ変更も考慮すると、CX-5の4540mm前後でCX-6かCX-4でしょうか。

そして、前回の記事でも書きましたとおり、このコエルのチーフデザイナー小泉巌氏にお話をうかがえたので共有できればと思います。

GoPro片手にあちこち回って終了間際までいたおかげで、ちょうど全てのスケジュールを終えていた小泉氏に遭遇できました。

なお、ブログ向けに口調を整えようか迷いましたが、元の会話調のままのほうが雰囲気が伝わるはずですので、ざっくばらんな調子はそのままに残してあります。

コエルのトラクションフォルム

小泉氏「魂動というデザインテーマは動きであって、それはどんな動きかって具体的には定義していません。色んな動きを車によって表現しています。自動車の動きですから、直線だったらトップスピードまでいくし、コーナリングのときは、ぎゅーっと減速してコーナーを曲がっていく。そういった色んな動きがあって、そのときどきに車に託す感情っていうのがあるわけじゃないですか。そこを表現していきます。」
小泉氏「この車(コエル)の場合は、そういう車の持ってるトラクションをタイヤに、四つのタイヤに向かって伝えていく、パワーを四つのタイヤに伝えていくようなトラクションフォルムというテーマで作っています。」

小泉氏「フロントホイールとリアホイールに向かって、ちょっと色の濃い部分が斜めに見えません?」

「見えます!」

小泉氏「あれが、トラクションをタイヤに向かってかけていくっていう表現です。実は、あそこは影を受けるような下向き面になってるわけじゃないんです。平面方向のテンションを微妙にずらすことによって、あそこにああいう陰影が生まれてくるんです。そう作り込んでいるので、角度を変えて色んな方向から見ても、光の流れがトラクションを表現してくれます。」

解説はなくて良い

「フランクフルトで公開された時にいろいろニュースを読みましたけど、そこまで解説してみせたメディアってあったでしょうか?」

小泉氏「ほとんどないです。このテーマスケッチを、ティザースケッチでちゃんと見せてますけど、なかなかそういう風に見てくれないので、めんどくさいんであんまり言わないんですけど笑」

「!?笑」

小泉氏「実は、気が付かなくていいんですよ。たとえば、料理が美味しいというのは、『これは塩が何グラム入って、砂糖、甘みがこれだけあって、何がどうで』と考えたうえで美味しいとなるわけじゃないですから。食べて美味しいと感じることがまず大事なんです。コエルの場合も、こう見たときに『ああかっこいいな』という直感的なものを感じ取ってもらうことが大事で、どうしてそう思ったかっていうのは、別にどうでも良いことなんですよね。」

魂動デザインの進化

小泉氏「魂動というのは我々のデザインフィロソフィーですから、エレメントとかそういうものじゃありません。要するに考え方で、soul of motion。動きから来る感動を形にしていきましょうというメッセージです。」
「公式HPにも書かれてある、たとえばチーターが獲物を狙ってまさに飛びかからんとする、そういう一瞬の美しさでしょうか?」
小泉氏「そういうのもありますが、それだけではありません。たまたまチーターのような野生動物がこういうふうだってのをヒントにしたとアナウンスしているので、そういう具象的な表現が主体に思われがちだけど、実はもっと抽象的だったりしますし、バリエーションはもっともっとあります。」
「私は

靭(SHINARI)をずっと追いかけてたので、あれが魂動の原点であり続けるんだろうなって思ってました。」
小泉氏「シナリはあれはあれで良いんですけど、ラインやエレメントに頼った部分がありました。こいつ(コエル)はやっぱりそういったものをもっと進化させたいという思いもあって作りました。シナリに比べたらだいぶ要素が少ないでしょ?」
「たしかに改めて思い浮かべると、シナリはごちゃごちゃしているとも言えます。シナリには要素を詰め込みすぎたとも見えます。」
小泉氏「要素が少ないってことは、要素に頼っていた部分を、コエルのトラクションフォルムのようなサブリミナルな要素に置き換えているということです。だから、要素は少ないけど、感情は伝わってくる。シンプルなのに、そんな風に感じる。『なんでだろう?』ってずっと残りますよね。そこが、魂動デザインが進化しているところです。」

コエルの市販化は?

「コエルをこうして見ていると、展示位置が市販車両の側ということもあるせいか、どうも市販化が前提という風に感じるんですけど、市販化ってあるんでしょうか?」
小泉氏「そうですね、今ここで展示されてある市販車両を我々は第6世代と呼んでいるんですけど、この世代のスカイアクティブ技術だとかコンポーネントの組み合わせで、コエルは実現できます。そういうリアリティを持っていますから、そういう風に見えると思います。」

小泉氏のおっしゃるとおり、コエルの内装を見ると

センターコンソールや

見覚えのあるヘッドアップディスプレイなど、たしかに既にあるコンポーネントで構成されています。市販化はありそうです。

コエルはCX-9?

「フランクフルトで発表された時には、CX-9かも!?というニュースもあったので、コエルがCX-9なのかもと足を運んだんですが、どうも違いそうですね。」
小泉氏「CX-9はアメリカに向けた車なので、CX-9はCX-9としてアメリカで発表することになると思います。」

ミニバンに魂動デザインは?

「初代MPVのディーゼルモデルを数週間ほど運転したことがあって、あのFRディーゼルターボの走りが面白く感じたんですがが、ああいうミニバンで魂動デザインって出ないんでしょうか。」

小泉氏「ミニバンは難しいですよね、基本が箱だから。コエルもこれだけ抑揚を持たせられているのは、やっぱりそれだけ寸法的な余裕があるからです。ミニバンで魂動デザインは難しいです。」

ハイブリッドカー戦略とブランド戦略

「アクセラにハイブリッドが設定されてから、ハイブリッドのラインナップが全く増えていないですが、他の車種への展開はないんでしょうか?」
小泉氏「たしかに力は入ってないかもしれませんね。ハイブリッドで運転して面白いと思った車あります?」
「ハイブリッドでは…今ちょっと思い付きません。純粋な電気自動車だったらテスラのモデルS、P85+っていう一番速いのに乗って、その馬鹿っ速さ自体を楽しんだことはありますが、ハイブリッドだと今のところはないです。」
小泉氏「僕も、今のところはなくて、あの回生ブレーキの音が苦手なんですね。」
「これだけ世の中にハイブリッドが出回ってて、ハイブリッドしか知らない人も少なからずいるだろう状況で、運転して面白い車を提示して崩していくのも面白そうですね。」
小泉氏「まあその人たちが気づけば良いですけど、無理に気づいてもらおうとは考えていませんね。マーケティングっていうのは、興味の無い人にも買ってもらいましょうということだから、へりくだって『どうぞ』ってなる。で、なかなか買わない人には、『じゃあ値引きしますから』みたいになって、ブランドバリューが下がってしまうわけですよ。自分で自分のブランドを貶めてどうするんですかっていう話です。そういうマーケティング一辺倒の姿勢からは決別しようっていうのが、今の我々の姿勢なんですね。」

さいごに

小泉巌チーフデザイナーが最後に放った言葉には、今のマツダの姿勢が象徴されているように思います。販売台数を軽視しているということではないのでしょうけれど、むやみに販売台数を追ったりはしていないのでしょう。

今回つくづく痛感しましたが、ネット上で四、五時間かけて調べたり雑誌を読みあさったりするよりも、その当事者から直接5分程度でもお話を頂戴するほうが、遙かに濃い内容に接することができます。とても記事にできないストレートな発言に触れることができるのも、当事者ならではだと思います。

また聞きの伝聞情報ではなく、可能な限り一次情報に近いところへアプローチしたい、そう強く感じたひとときでした。

レクサスも頭金ゼロで乗る時代。
もちろん新型アルファードだって頭金ゼロ。
あの人の車も、頭金ゼロかも【トヨタ公式】

新時代の車の楽しみ方へ

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