【RX-VISIONとロータリーエンジンの未来】

  1. マツダ(MAZDA)

今年の東京モーターショーはマツダのプレスブリーフィングで封切られました。そこでワールドプレミアされたのが、

RX-VISIONです。

次世代ロータリーエンジンである

「SKYACTIV-R」を前提としたコンセプトカーですが、当日まで明確な事前情報もなく、「何かロータリーのコンセプトカーが発表される」程度のリークしかありませんでした。

モーターショー前に各出版社から発売されていたモーターショーガイドブックにも、このRX-VISIONは登場していません。

そのため、プレス会場は

ごった返して熱気に溢れており、スケジュールぴったりに足を運んでしまった私は中に入れず、小飼社長のスピーチも聞けないままにRX-VISIONと対面することになりました。

RX-VISIONは魂動デザインか?

社長のスピーチが終わり、撮影時間が始まってしばらくして辿り着けた

RX-VISIONです。格好良いです。これからマツダに何が始まるんだろうかという予感すらします。

時間が経っても周りにはまだ名残惜しげに人が残っており、次のプレスブリーフィングに行かなきゃいけないのに、という声も聞かれます(私は移動予定なし)。

色んなアングルから眺め、ひとしきり「うんかっこいいなあ」ばかりの感想を抱きつつも、このコンセプトカーがどういう位置づけなのかが気になりました。

そこで、ついさっき社長が何を説明していたのかをスタッフの方にうかがうと、これは次世代ロータリーに向けての一投となるコンセプトカーとのことでした。

当然、疑問が湧いてきます。はてこれは魂動デザインなのかと。

以前、コンセプトカー靭(SHINARI)の展示スケジュールについて何度も繰り返しマツダに問い合わせ、余りにしつこく問い合わせたためにスケジュールが決まるとわざわざマツダの方から連絡をいただけたくらいに靭を追いかけていた私ですが、あの靭こそが魂動デザインの原点でもあり、教科書でもあると考えていました。

マツダが公式に定義するところによると、魂動デザインとは

生物が見せる一瞬の動きの強さや美しさです。それは、日本古来の武道である剣道の突きの一瞬、あるいはチーターが獲物を狙って力を溜め、飛び掛る一瞬。マツダデザインは、この最大の集中力を要する一瞬に、瞬発的な力、スピード感、凛とした緊張感、洗練された美しさ、ある種の色気を感じ、その生命感あふれる動き、心ときめかせる動きを「魂動(こどう)」と定義しました

とのことです。

靭さえ見ていなければ上記の定義をRX-VISIONにすんなり当てて見られるのですが、靭を見過ぎていたせいで魂動の定義をRX-VISIONに当てはめることに最初は抵抗を覚えました。靭のほうが魂動の定義ど真ん中だったからです

RX-VISIONを見て頭を過ぎる言葉は

ただただ「スリーク」。

靭に比べれば抑揚は控えめで、これ見よがしのキャラクターラインも走っていません。物凄くシンプルに見えるけれども、とても余韻があるデザインです。

文句なしに格好良く、そぎ落とせるものはごっそりそぎ落とし、基本スタイリングだけで勝負しているかのごとくです。

もはやロータリー云々は後付けで、デザインのみ、かっこよさのみで一点突破しようとしているかのごとくです

ただ、よくよく考えるに、靭とRX-VISIONはともにコンセプトカーながらも、立ち位置が違います。

靭は原点で、RX-VISIONは発展系。立ち戻るべき原点があるからこそ、ここまで羽ばたける。そういうデザインなのでしょう。

RX-VISION全景

RX-VISIONブースではテレビやラジオの取材がない時間帯に予約を入れておくと、

ステージに上がっての近接撮影が可能となっていました。

ドアミラーは

靭でもおなじみのカメラ内蔵型です。

ホイールには

カーボンらしき補強が見受けられます。ホイール丸ごとカーボン成形ということではなく、

強化したい箇所へドライカーボンを高圧熱着させているのでしょう。

このようにホイール外面にカーボンを高圧熱着させて剛性強化する手法は、たとえばカーボンドライジャパン公式HPの施工写真でもいくつか確認できます(ポルシェ997ターボ、997タルガへの施工例等)。

そして、

リアの

ディフューザーから

アンダーパネルにかけても、やはりカーボンでした。

メーターパネルを見ると、

10,000rpmまで刻むタコメーターと、軽く300km/hを超えるスピードメーターが確認できます。

センターコンソールに目を遣ると、

アルミ削り出しらしきシフトノブも確認できます。

内装を見ていると実に統一感があり、

ダッシュボードや

センターコンソール、そして

リアウィンドウからのぞく

何やらな感じまで、配色も意匠も見事の一言でした。

動画

ちなみに、初日があまりの人だかりだったため、その後は絶対的に人が少なくなる時間帯だけを狙って足を運んでいました。

先ほどのリアアンダーパネル撮影時も人が少なめだったので、視線を恐れず這いつくばっての撮影です。

平日なかびの終了15分前くらいであれば三脚を立てる余裕もあり、

動画もじっくり撮影できました。

— 2017/08/06 00:41:38 補足 —

できる限り高画質で見ていただきたかったので、当初は動画をサーバーに直接アップロードしていましたが、サーバーへの負荷が激しくなってサイト全体が繰り返しダウンし始めたので、補完用にアップロードしていたYouTube版へと変更させていただきました。YouTubeはオリジナルより画質が落ちますので、1080モードでご覧いただければ幸いです。

— 補足 end —

この動画は是非ご覧いただきたいのですが、

黄色い丸で囲った部分につい視線が行くかと思われます。

S字というかZ字というか、ともかくこの流れるような陰影には、何かとてつもなく大きな意味が込められているはずです。余韻のある美しさを感じさせる肝がここにあるはずです。

残念ながらここに大きな意味が込められているはずだと意識できた頃には、デザイナーの方に質問できる日は過ぎ去ってしまっていました。直接このことを問うことができず本当に悔やまれます。

ロータリーなのにロングノーズ

ロータリーエンジンといえば、サイズと軽さが信条です。冷静に考えると、

これほど長いボンネットなど必要ないのかもしれません。

しかし、私はボンネット内が隙間だらけ、すっかすかでも良いのではないかと考えています。ボンネットが長いからといって、そのスペースを埋め尽くさないといけない道理はありません。

私は直列六気筒のSUVに長く乗った後、現在は直列四気筒セダンに乗り換えています。この直列四気筒車のボンネットを初めて開けたときは、物凄く隙間だらけで驚きました。まさにすっかすかです。二気筒違うだけでここまで違うものなのかと、その第一印象は今でも忘れられません。

しかし、いざ運転してみるとすっかすかだけあって字義通りに鼻先が軽く、鼻が軽いと車のあらゆる挙動も軽く感じられ、ラグの無さも自然そのもので、生活道路での走る・曲がる・止まるが楽しくてなりません。

SUVからの乗り換えなので重心の高低も加味しないといけませんし、鼻先の軽重だけで楽しさの全てが決まるわけでもありませんが、それにしても楽しい限りです。

公式に発表されているRX-VISIONのスリーサイズは

全長4,389mm
全幅1,925mm
全高1,160mm

となっていますが、画像や実車を見た方はもっと全長があるように感じられるのではないでしょうか。少なくとも私の目には、実寸以上に伸びやかに見えます。

極めて低い位置までボンネットを下げられるコンパクトなロータリーエンジンだからこそ、このロングノーズとあいまって可能となった表現なのでしょう。

RX-7の後継か?

RX-7の後継モデルについては、これまで何度も浮かんでは消えてきたトピックです。風物詩とも言えました。しかし、そのような噂ベースでしかなかった話も、このRX-VISONを前にすると急に現実味が増してきます。

RX-7と共に過ごしてきた方々には「セブンとはなんぞや」というこだわりがきっとあるはずで、「RX-VISIONはセブンじゃない!」となるかもしれません。

しかし、たとえばマツダのコスモは公式には四代続いていますが、初代コスモスポーツも次のコスモも三代目もユーノスコスモも、割とバラバラな印象があります。

特に、初代から二代目にかけては、飛躍と呼んで良いのか断絶と呼ぶべきか、そのようなバトンタッチとなっています。

RX-7などRXシリーズの場合、車名の定義は

R・・・ロータリーエンジン
X・・・未来を象徴する記号
7・・・車格を表す数字

となりますので、RX-VISIONがセブンの後継となってもこの定義から大きく外れるところはありません。私はすんなりと受け入れられそうです。

ロータリー50周年モデルはあるのか

1967年にコスモスポーツでロータリーを世に出して50年の節目となる年、それが2017年です。まさに目前といったこのタイミングで登場したRX-VISIONですから、RX-VISION、あるいはRX-VISION的なニューモデルが販売されるのかが気になります。

しかし、残念ながらそのようなニューモデルが登場することはなさそうです。現実的な話として間に合わない、そういう空気でした。

もしロータリーのニューモデルが出るとすれば、おそらくはマツダの創業100周年となる2020年だと思われます。

超(KOERU)」チーフデザイナー小泉巌氏

ところで、今回幸運にもコンセプトカー「超(KOERU)」のチーフデザイナー小泉巌氏に少しお話をうかがうことができました。当然、コエルのデザインについて解説いただきました。

コエルはコエルとして独立した記事にするのでここでは割愛させていただきますが、ロータリーエンジンについて漠然と想像していたことをうかがってみたのでそのくだりについて記しておきます。

ロータリーエンジンの未来

「ロータリーエンジンのレンジエクステンダーとしての利用は、1970年に世界で初めてマツダが

ex005-hybrid(カーグラフィック誌1970年12月臨時増刊号より)

EX005ハイブリッドとしてモーターショーで世に問いましたが、この仕組みをさらにマツダ独自に発展させることってできないんでしょうか。

今のハイブリッド車や電気自動車の加速感ってどうしても似たようなフィーリングになりがちです。

そこで、発電用にロータリーエンジンを利用し、さらにアクセルを踏み込んだときにそのアクセルに合わせて発電用ロータリーも回転が上がるようにし、モーターのシュィーンとロータリーのキュィーンとが混ざり合いながらモーター独自の加速感を味わえると面白いかもと想像しています。

この場合のロータリーは直接の動力源ではなく、アクセル開度と回転数はただの疑似相関ですが、それでもロータリーエンジンで加速しているかのような感覚が味わえそうです。今はもう作られた排気音がスピーカーから車内に流れてくる時代ですし、これくらいのギミックは許容されないでしょうか。」

小泉氏「ん~…。まあ色んな使い方があるけれども、どうなんですかね、ロータリーってやっぱりパワートレインとしての役割を担っていますよね。

パワートレインではなく発電機にロータリーを使って、その車がルマンを制したとしても、誰も喜ばないと思うんですね。

ロータリーは燃料を燃やしてそこから取りだしたパワーを直接使うから魅力があるんで、発電機になった途端、何だっていいわけですよね。

小飼さんが言っているのは、ロータリーエンジンっていうのはマツダが実用化し、もうマツダしか研究開発をしていない、今マツダがそれを諦めてしまったら、この世の中からロータリーエンジンっていう内燃機関が消えてしまう、そういう使命感と言いますか、自負心もあるということなんです。」

ということで、小飼社長の話を聞いてなかった私のうっかり質問で、ロータリーに対する本気度が改めて実感できた次第です。SKYACTIV-Rの全容が待ち遠しい限りです。

さいごに

マツダブースには

小学生の団体もやって来ていました。

「メーカーよくわかんない、エンジンもよくわかんない、だけどカッコイイ!」

とは言っていませんでしたが、何となくでも格好良さは伝わっているようです。

理屈抜きでも格好良く、理屈込みでも格好良い。RX-VISIONはそんなコンセプトカーでした。

レクサスも頭金ゼロで乗る時代。
もちろん新型アルファードだって頭金ゼロ。
あの人の車も、頭金ゼロかも【トヨタ公式】

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