【日本自動車博物館が凄かった!】

  1. 日本自動車博物館

 八月に

日本自動車博物館へ行ってきました。想像を超える規模でした。入館してぐるり見渡すだけで、これまでの伊香保お台場とは明らかに違うコンセプトが伝わってきます。

博物学の余韻

 日本自動車博物館からは、「とにかく収集して並べる」「多くのものを一堂に会して並べる」「すべてを一覧できるようにする」という類の、博物学のプリミティブな起点が感じられました。カタカナ表記の「ミュージアム」ではなく、博物学としての博物館、そういう感じでした。

 所蔵台数は500台超と、朝一番に入ったところで一日で鑑賞し尽くすのは至難の規模なので、以前の伊香保の記事でも触れましたが、やはり何度でも足を運ぶつもりで鑑賞するのが最も賢明な姿勢だと思われます。一日で全部鑑賞し尽くそうと欲張ってしまうと、消化不良は必至でしょう。

ビデオ撮影は禁止

 こちらの博物館の注意事項として、動画撮影の禁止がありました。静止画、つまり普通の写真撮影は問題ありません。どうして動画だけNGなのかを聞いてみたのですが、スタッフの方は誰も理由がわからなかったので、昔からの慣習なのでしょう。「静止画がOKならタイムラプスの静止画を繋げて動画にするのもOK?」という素朴な疑問も浮かびましたが、やぶ蛇になりそうなので口にはしませんでした。

書籍でしか見たことがない車両

 館内に入ると「まず三階からご覧ください」との案内があるので、三階へ。すると早速、書籍でしか見たことがない車両がゴロゴロしています。

ロードペーサーがいる

 マツダの広場にいたこの

ロードペーサーは書籍でしか見たことがなく、実車を見ても一瞬そのロードペーサーだとわかりませんでした。

 説明パネルに「外車ではありません マツダの最高級車です」とありますが、改めてサイズを確認すると、1975年当時で全幅が188.5cmもあります。日本車にはあるまじきサイズとも言えます。1975年当時でこれより幅が広いセダンといえばセンチュリーの189cmくらいでしょうか。しかも、ロードペーサーはそのセンチュリーを上回る価格だったので、たしかに説明パネルにある通り、日本車感は乏しかったことでしょう。
 さらにエンブレムをよく見ると、

センチュリーとロールスロイスを同時に超えてやろう」という意識すら感じられます。
 
 リアの形状や

ホイールアーチのアルミトリム、そしてホイール形状を見ても、当時のフラッグシップたらんとした意気込みが感じられます。

存在すら知らなかった車両

 ロードペーサーのように書籍でしか見たことがない車がたくさんある一方で、書籍どころか存在すら知らなかった車両も多く展示されていました。

スバルのキャスピタ

 存在すら知らなかった車両の筆頭が、この
lion
スバルのキャスピタでした。これは車の周りに変なものが映り込んだからこのように切り取っているわけではなく、斜め前方から撮影した画像がすべて傾いていたため、苦肉の策として切り取って記事枠に収め込むかたちで傾き修正した次第です。
 さて、

キャスピタのシートを覗き込むと

レカロの特注のようで、

象形文字っぽいエンブレムがスーパーカーボディに妙に合っています。
 車両説明を見ると、

スバル&ワコール&童夢という不思議な生い立ちでした。水平対向12気筒エンジンで585馬力のパワーを誇り、車重が1240kgしかないとなると、どう控えめに言っても最高速は軽く300km/hオーバーで間違いありません。パワーウエイトレシオは2.12kg/ps。名実共に

スーパーカーですが、どうしてこんな隅っこで展示されているのだろうかと、余計なことが気になりました。

純金箔ラッピングのマツダ・カペラ

 同じく存在すら知らなかった車両が、

純金箔を1,000枚使って字義通り「純金ラッピング」のマツダのカペラです。
 車両説明によると

金箔の上からコーティングしているので洗車も可能とのことです。といっても、ガソリンスタンドはもちろん、ディーラーに持ち込んでもきっと洗車は断られることでしょう。
 エスカレーターで三階に辿り着き、この金色カペラが視界に入って

間近にと歩を進めるそのわずかな間に、「バブルだ」「絶対バブルだ」とおそらく五回はバブルという言葉を心の中で連呼したような記憶がありますが、

1989年ということで、やはりこの時代でないと誕生しなかった一台だったのでしょう。
 最近のカスタムカー界隈ではラッピングが流行の兆しを見せており、金色ラッピングのスーパーカーも登場していますが、それら金色ラッピング車両とこの

カペラを比較展示するイベントがあれば面白いのではないでしょうか。このカペラもラッピング車両です。しかも

通産省(現経産省)指定の伝統工芸材料である金沢純金箔でラッピングという筋金入りの本物志向ですから、現行ラッピング車両相手にも引けを取らないに違いありません。

小松市だからコマツ

 ところでこんな

小松農民車」なる農耕車も展示されていました。コマツという社名の由来は石川県小松市の小松とのことで、全く知りませんでした。言われてきづく「コマツと小松」です。

マツダコスモスポーツのホイールキャップ

 マツダのコスモスポーツはマツダの広場ではなく

特集エリアで展示されていたのですが、ふとメガウェブでの謎めいたホイールを思い出してこちらのホイールも確認したところ

SPEED STAR“となっており、こちらはこちらでやはり謎でした。こういうホイールキャップはコスモスポーツの「お約束」なのでしょうか。

このデザインの元祖は?

 1950年式の

ビュイック・スーパー8や、1953年式の

モーリス・オックスフォードのグリルを見ていると、このようなデザインに何か呼び名はあるのだろうかと気になりました。グリルからオーバーライダーにかけて一つのトレンドがありそうですし、どのブランドのどの車両から始まったのかも気になります。

 私がこのデザインを初めて意識したのは、ジョジョの奇妙な冒険という漫画でした。たしかインドから陸路でパキスタンへと移動中に襲ってくる車がまさにこのデザインで、何となく忘れられません。その後も折に触れて思い出されます。たとえば、ハドソンの車両を見ると、「あ、ジョジョの車」という具合に。

 当時はオーバーライダーという言葉も知りませんでしたが、記憶に残るデザインでした。車のデザインについて流線型であるとかテールフィンであるとかそういうくくり方をした場合、このグリルからオーバーライダーにかけてのデザインをひとまとめにどう表現していたのでしょうか。何か上手く言い表した言葉はあるだろうと思いますが、その言葉にまだ出会えていません。

喫茶ローバー

 館内にはお土産コーナーに隣接して喫茶室「ローバー」があります。メニューにも

こだわりが感じられるのですが、時間帯によってはメニューが制限されていたり、そもそも営業していないシーズンもあります。遅い時間帯になるとご飯が無くなってカレーが注文できなかったりするのでご留意ください。ちなみに私は紫蘇ジュースをいただきましたが、とても美味しかったです。

さいごに

 博物館を山にたとえるなら、今回は日本自動車博物館という山の一合目くらいにしか到達できなかったかもしれません。展示車両が多く、見どころも多く、さらに私が気づいていない見どころもまだたくさんあるはずなので、実際は一合目にすら辿り着けていない可能性もあります。
 ただ、登頂にいたるルートは何種類もあるでしょうし、他の自動車博物館を巡っているあいだに一気に七合目、八合目まで味わえる体力が付くかもという予感もあります。他の博物館同様に数年サイクルで何度も訪れたい博物館でしたが、山頂が高そうなので、長く訪れることになりそうな博物館でもありました。

レクサスも頭金ゼロで乗る時代。
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