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たった三ヶ月間ではありますが、E46の3シリーズ生活を送っていたので、その期間中に感じたことを残しておきます。

私が乗っていたE46は318iの非Mスポ車両で、当初は調子が悪かったのですが、エアフローセンサー修理後に絶好調となりました。このインプレッションはその本来の姿についてとなります。

一体感

これまでSUVで10万キロ以上を走ってSUV生活が身に染みつつ、レンタカーや代車に試乗その他で違う車にも色々と乗る機会はありましたが、この318iは本当に印象に残る一台でした。

これまでのSUVもBMWでしたが、318iは同じBMWとは思えないほどまったく別の車で、この車には明らかに思想がある、そう感じる一台でした。

手放して一ヶ月以上経つ今になってもなお、走行時の感覚を思い出せるほど肌に残っています。

エンジンやサスペンションやシャシーやハンドルやタイヤやインパネなど、全てが318iという1モデルのためだけに設計、開発されたかのような錯覚を覚える一体感、自在感でした。

ただ、ビジネス的にそんな専用設計のわけはないので、理由探しをしてみます。

鼻先の軽さ

まず、鼻先の軽さをとっかかりにして探っていきます。

私が318iの前に乗っていた車は直6のSUVだったので、エンジンルームは

このような感じでした。10万キロ以上を共にしただけあって、私にはこの直6の密度が全ての基本です。

そのため、318iのエンジンルームを初めて見たときの第一印象は、

「うわっ、すっかすか」でした。エンジンカバーの視覚効果をさしおいても、すっかすかに感じました。

ちなみに、現在乗っている車はV8で、第一印象は

「これ排熱大丈夫なん?」です。ぎゅうぎゅう詰まり過ぎていて、馬力を考えると排熱が心配になりました。

BMWですから、直6だろうが直4だろうがV8だろうが四駆だろうがFRだろうがSUVだろうがセダンだろうがワゴンだろうがクーペだろうが、エンジンが前輪の車軸より前方に置かれることはありません。ハンドリング確保のための王道レイアウトです。

ただ、同じように前車軸から後方寄りにエンジンが置かれていても、車高が違えば重心の高さも異なってきますし、シリンダーの数が違えば重さや体積にも差が出てきます。

加えて、過給の有無で補機類も様変わりすることになるので、直4NAともなればすっかすかになるのも致し方ありません。

しかし、エンジンルームに余白があるからといって、そこに何かを詰め込まなければいけない決まりはありません。318iを味わってしまうと、エンジンルームはすっかすかこそが本分、こっちのほうが良いんじゃないかとすら思えました。

エンジンルームがすっかすかで前車軸より後方寄りにコンパクトな直4、当然に鼻先は軽くなります。

鼻先が軽い、これすなわち一体感の源泉、そう断言してしまっていいのかはわかりませんが、一体感に大きく効いていることは間違いありません。

ハンドリング

スポーティーという言葉はどこかクイックなハンドリングと同義に捉えられがちです。しかし、318iのハンドルはクイックではありません。クイックではないけれども、スポーティーです。切れ味の良さすら感じます。

318iに乗っていると、ハンドルがクイックだからスポーティというわけではないことがよくわかりました。

わざと白線を踏んでみたくなるような豊富なステアリングインフォメーションについては、前のSUVも同様でした。ただ、318iのほうがやはり軽く、ワンテンポ遅れる感がありません。

318iは軽いフロントを軽いものとして感じることができます。極太タイヤと2.4トンオーバーのボディを電子制御で軽く感じさせるステアリングとは全く意味が異なります。

重いものをさも軽いかのように感じさせる味付けではなく、ボディなりの重さを感じさせた結果としての軽さ、それが318iの軽さなのでしょう。

余計な電子制御を介在させてないので、それだけ自然な調整ができているのかもしれませんし、それも切れ味と捉えてしまっているのかもしれません。

作り手ではないので込み入った細かな比較検証などできませんが、余計なお化粧や厚化粧が不要という点で、「素性の良い車」とはこのような車を指すのだと考えています。

先走らないエンジンとバランスの良さ

318iのアクセルを踏んで少し加速するだけで、「ああ、このエンジンはこういうもんだ」という感じがします。この小さなエンジンをさらにぶんぶん回すと、さらに、「ああ、これはこういうもんだ」という感じがします。

吹け上がりという点を見るなら、直6ほどのきめ細やかな吹けの良さはありませんし、カタログ上は全くパワーがありません。

燃費や馬力やトルクなど、現行四気筒のほうが遙かに優秀です。

しかし、現行のターボ化された四気筒車を運転した際、「このエンジンは吹かすもんじゃないなあ」と感じました。

318iの直4はパワーもささやかで吹け上がりもさほどではありませんが、エンジンが先走りしていないと言うべきか、エンジンとボディの一体感があります。

私が今乗っている車はカタログ上は軽く500馬力を超えていて、オートバックスでシャシダイ計測すると600馬力を超えていましたが、それでも発進時には相応の重さを感じます。

さらに、カタログ上は70kgm近く、シャシダイでは80kgm近いトルクを発揮しており、一般道では2,000rpm内で事足りてしまうくらい低域からの最大トルクですが、それでもやはり重さを感じます。

重いのだから重く感じて当然なのですが、アクセルを少し強めに踏むと、突然ボディが軽く感じられるような、これぞドーピングという加速が得られます。

もちろん、これはこれで楽しくもありますし、上り勾配の高速道路で底なしのパワーとトルクを発揮する追い越し加速は他の車種ではなかなか味わえません。

しかし、日常的な細街路など全領域に渡って318iほどの一体感やまとまりが感じられるかとなると、ちょっと自信がありません。

318iは何かこう、全てのバランスが良い感じなのです。

エンジンは非力なのに走っていると余りに気持ち良いので、318iはひょっとして速いんじゃなかろうかと勘違いし、0-100km/h加速を計測してみると10秒くらいかかったのでやはり勘違いだったと思い直したくらいです。

パワーに気を取られるくらいパワー先行型の楽しさもまた1つの世界を示してくれますが、318iのように車自体の一体感やバランスの良さを味わえる楽しさもまた、決して無視できません。

ボディサイズ

私はそれまでのSUVで自称1cm単位で車を寄せられるくらいには車体感覚を掴んではいましたが、318iに乗ってみるとそういう次元の車体感覚ではなく、本当に自在に操れる操作感がありました。

この操作感は先に述べた素性の良さにもあるのでしょうけれど、ボディサイズも大きくものを言っているはずです。

「手の内におさまるボディサイズ」とは誰が言い始めた表現かは知りませんが、見事な言い回しです。

実際、ボディが大きくなればなるほど、ボディの末端部分が手元から離れてしまった感覚、まだ神経が通っていないような感覚にとらわれます。

E46の時代に浸る

E46に限った話ではありませんが、車はその時々の時代環境の中で生まれます。その時代の市場の声、保安基準、作り手の熱意にも左右されます。今の時代にE46に似た車を作ることはできても、E46という車は作れません。

そうであるなら、E46の時代に出来る限り浸ってしまおうということで、

カセットテープを購入し、

E46のカセットデッキで聴きながらのドライブも楽しみました。

1999年式ですから、選曲もその時代のものです。

時間差でやってくるオートリバースがとんでもなく懐かしいですが、E46はそういう時代の車なのだと考えるとまた感慨もひとしおです。

気になった点

美点ばかりを書いてきましたが、気になった点も当然あります。

どうしても気になったのは、ときおりやってくる強い突き上げでした。

ディーラーの方によると、ダンパーの減衰力は新車から5年ほどでもう低下し始めているそうです。

私のE46は16年戦士だったので、こればっかりは年式相応でした。

価格では計れない価値

318iに乗っていると、車としてはこれで十分だし、上等だなと思いました。

所有期間はたったの三ヶ月でしたが、石川県、栃木県、群馬県、愛知県、その他ほうぼう走り回りました。

東京モーターショーへも

318iで馳せています。

318iを振り返ると、車の価値というのはつくづく価格ではわからないものだと思います。

私の318iは50万ほどで購入して20万ほど修理代をかけて三ヶ月後の下取りは3万円少々でした。

この価格で同じくらいの何かを提供してくれる車がどれだけあるだろうかと考えてしまいます。

また、下取りの価格を知り、とっさにこのまま廃車になってしまうのだろうかと不安になりました。

年式が年式なので認定中古車で世に出ることはまずあり得ません。業販へ流す手間に見合うだけの利益も見込めないでしょう。査定上のプラスポイントといえば、購入時に通した車検がほぼ二年残っていることくらいです。

ということで、手放す一週間前に

お手軽タイプのガラスコーティングを施工してもらい、

フロント側のドライブレコーダーは残したまま下取ってもらいました。

「これだけピッカピカで新しいドラレコも付けてたら廃車にしづらいだろう」という浅はかな考えです。

そもそもこの318iはディーラーの方がご自身の日常の足車にする予定だったものを、私の担当の方が横取りして融通してくれた一台でした。

ディーラーの方ならこの318iがきっちり整備されてエンジンも絶好調ということがわかっているので、本来予定されていた足車にでもなってくれればと考えていますが、さてどうなったことでしょう。

さいごに

走る楽しさというのは決して単一方向だけに伸びた指標ではありません。メーカーごとに捉え方は異なっているでしょうし、同じメーカーであっても時代ごとに解釈や表現方法は異なっていることでしょう。BMWがE46の時代に追求していた楽しさを、今は別のメーカーが追求しているかもしれません。

私はBMWの何たるかなどわかっていませんが、少なくともこのE46型3シリーズの318iについては、BMW濃度が高い一台だと感じました。色濃い思想が感じられる一台で、方向性がありました。

BMWが信じる”freude am fahren(駆け抜ける歓び)”に向かって皆が一丸となっていたんだろうな、そう感じられた一台です。

名車という言葉の定義なきままに進めましたが、その定義はどうあれ、318iはきっと名車に違いありません。

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    • 匿名
    • 2017年 6月 08日

    私は現在もE46ユーザーなのですが、流れるように読みやすく、E46への思いが行間からあふれている文章が印象的で、何度も拝見しております。
    素晴らしいエッセイをありがとうございます。

      • ultimative
      • 2017年 6月 10日

      もったいないコメントをいただき誠に恐縮です、ありがとうございます。

      このE46に乗り始めたきっかけは本当に偶然からでした。

      事故で全損になったE53の代車としてしばらくはレンタカーを乗り継いでいたのですが、次の車購入までそのまま適当なレンタカーを乗り繋ぐよりはこちらのほうが絶対に良いからと、担当の方から薦められて乗り始めた次第です。

      手放すときは本当に惜しく、実家ならあと5台や10台は置けそうな田舎なのでさてどうしようかと迷いましたが、実家に送っても月に数えるほどしか乗られない車になりそうだったので、下取りを選びました。この車は飾って眺めてよりは実際に動かして、走る楽しさ気持ちよさに一体感を味わってなんぼですので、誰も乗ってあげない状態が主となるのは46としても本意ではないはずです。

      そのため、廃車されず無事に次のオーナーへ渡っていたことを知ったときには心底ホッとしました。

      今もう46のような車を作るのはとても難しい時代ですので、現在お乗りのE46ライフが長く続くことを祈っております。

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