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マツダのロータリーロケットこと、

RX500です。

今年の一月、RX500の展示だけではなく運転席に座れるイベントも開催されるとのことで、広島へ参じてきました。場所は広島市交通科学館で、

1月10日から12日までの三日間限定イベントでした。

RX500とは

RX500は市販車両ではなく、1970年の東京モーターショーでお披露目されたコンセプトカーとなります。

未来的で幾ばくかの夢を見させてくれるというコンセプトカーの本分から考えると、同じコンセプトカーであるその後の風籟や靭に負けないくらいのインパクトが当時あったのではないでしょうか。

RX500はコンセプトカーではありますが、マツダ初のロータリーミッドシップという意欲的な一台でした。本当に一台しか製作されておらず、現在はいわゆるチタンシルバーっぽい銀色をしていますが、その前は東京モーターショーでのイエローで、さらにさかのぼって製造当初はグリーンでした。同じ一台が色を変えて様々なメディアに姿を残しています。

基本スペック

RX500の基本スペックは次の通りです。

全長 4330mm
全幅 1720mm
全高 1065mm
定員 2名
車重 850kg
ホイールベース 2450mm
トレッド 前後とも1400mm
燃料 ガソリン
エンジン 10Aの2ローター(491cc×2)
最高出力 250ps/7000rpm
最高速度 200km/h以上
ミッション 4速MT
前後重量配分 50:50

車重が850kgなので「おっ、トン切りで250馬力」と素早くパワーウェイトレシオを計算したくなるのですが、1970年当時の感覚ではこの850kgという数字は重めだったらしく、CARグラフィック誌では

想像するほどにはボディは軽くなく、何と850kgもある
過大な車両重量

などと評されていました。

CARグラフィック誌の行間を心の目をこらして読む限りでは、RX500は700kgくらいが適正値と考えていそうです。しかし、このスペックで700kgだとパワーウェイトレシオはちょうど2.8kg/psとなります。現行GT-Rの2.87kg/psを超える数値です。

そもそも、850kgのままでも3.4kg/psと立派な数字ですし、1970年当時は一体どれほど高い性能が求められていた時代だったのか、私にはよくわかりません。

ドア

RX500のドアの正式名称は

「バタフライウィングドア」となります。ガルウィングでもなく、シザードアでもなく、バタフライドアでもなく、バタフライウィングドアです。

一見するとバタフライドアに思えるのですが、バタフライドアではなくバタフライウィングドアと呼ぶからには、何か違いがあるのでしょうか。

そこでつぶさに観察していると、RX500のドアを跳ね上げた際、ドアと天井との間に

雨よけのウェザーストリップがありました。

これがバタフライドアとバタフライウィングドアとの違いとは思えませんが、違いはこれくらいしか見つけられませんでした。

コックピット

RX500のコックピットは物凄く狭いです。私にはとても窮屈でした。

身長150cm台の人間が座ると

このようにぴったりお似合いで無理のないシートポジションなのですが、私が座ると

無理しかない感じになります。膝小僧でウィンカー操作できそうです(左折のみ)。

この身動きが取れないコックピットの足元では、ペダルレイアウトが

見事に左にオフセットされており、さらに難易度が上がります。

運転が前提のドライビングポジションはあきらめ、シートで最もくつろげる安楽な姿勢を探った結果、

こう落ち着きました。

シート

「窮屈ならシートを調節してみては?」というご指摘を受けそうですが、RX500のシートは前後のスライド調整ができません。

シートだけを見れば

きちんとホールドしてくれそうな形状をしているだけに、サイズが合わなかった私は無念です。左右のサポートや座面長まで味わう余裕もありませんでした。

ちなみに、このシートはオリジナルではなく張り替えられており、張り替え前の状態についてはマツダの方曰く、「原形をとどめないほど腐っていた」そうです。

内装その他

その他、

ウィンカーや

ヘッドライト(ハイビーム&ロービーム)のレバー、そして

センターコンソールはこのような具合です。センターコンソールに並ぶボタン類はそれぞれ右から、「ラジオのAM/FM切り替え」「音声バランス調整」「音声トーン切り替え」「ボリューム」となります。

メーター類

メーターについては

三連になっていますが、左のメーターは意表を突いてラジオのチューナー表示でした。真ん中がスピードメーターで、右が15,000回転までをも刻んだタコメーターとなります。

CARグラフィック誌によると

速度計は、精度を重視して電気式が採用されている。さらに、200km/hになると、200を0とするもう1本の針が現れる構造をとって正確を期している

とのことで、要するに時速200kmを超えると特殊な計測が始まるようですが、説明をうまく咀嚼できない私にはその動きを想像できません。

200km/h以上でどのような動きを見せるのか、一度見てみたいものです。

そして、運転席から後ろを振り返ると

このような眺めでした。後方視界としては決して良好とは言えませんが、そびえ立つキャブレターにスペシャルな感じが溢れていて悪くありません。

ワイパー

RX500のモノワイパーは

大型トラック/バスから流用したワイパーとなります。

フェンダーミラー

RX500の

フェンダーミラーは、正面側から

風を取り込んで熱対策に利用しているそうです。ミドシップは

熱対策が大変とのことでした。そういえば、

車体の

いたるところに

風の通り道があります。

ステアリング

私はハンドルを切りませんでしたが、小学校低学年くらいの子供たちがハンドルを軽々と切ってタイヤの向きを変えていたので、ハンドルは相当に軽いのだと思われます。

小林彰太郞さんの試乗記によると、

15インチの太いBSレーシングをはいているのに、ステアリングはスピードのいかんを問わず無類に軽い

とのことなので、1970年代の車ですが、いわゆる「重ステ」ではないのでしょう。

給油口

RX500の給油口は左右それぞれに存在しますが、右側の

給油口は実はダミーで、給油は

左側からしかできません。

ボディ

RX500のドアとフェンダーはABS樹脂製で、その他はFRP製ですが、フロントの40cmか50cmくらいで区切れている

先端部のパネルと、リアの

20cmくらいまでを占めるパーツは、ウレタン樹脂でできています。衝撃吸収対策のため、これらには柔らかめの素材が用意されました。

マフラー

左右それぞれ


二本ずつマフラーが見えているので、

四本出しマフラーと呼んでも良いのでしょうか。中がどうして赤くなっているのかは確認が取れませんでした。

後ろ姿

RX500の後ろ姿からは

特撮の世界観が漂っています。ランプがとても

賑やかでした。マツダの方に確認したところ、一番上のグリーンのライトは時速100マイル以上で点灯し、アクセルを離すと次の黄色が光るそうです。三番目の赤色はおそらくダミーとのことで、四番目がウィンカーで五番目がブレーキランプ、そして最後の白がバックライトとなっていました。

1970年はどういう時代だったのか

さて、RX500がお披露目された1970年はどのような時代だったのでしょうか。私はまだ生まれていない年なので、時代の温度感や余韻も伝聞情報や過去の文章から想像するしかないのですが、「ロータリー」が注目されていたことは間違いなさそうです。

1960年代から70年代にかけての新聞各紙を「ロータリー」で記事検索しましたが、1970年前後では自動車業界はもちろんのこと、自動車業界の垣根を越えたところでも話題になっていました。

・富士重工もロータリー採用を検討 – 農機具や飛行機に(1970.12.12)
・ロールス・ロイス社は10日、英国防省との契約で、戦車用にディーゼル・ロータリー・エンジンの原型を製作(1970.8.12)
・東芝ロータリークーラー、ルームクーラーにロータリー革命(これは広告で1969.1.29)

等々。

特に、東芝の

新聞全面広告でのロータリー推しは印象強く、特大サイズの広告でロータリーのメリットを謳っていました(朝日新聞縮刷版昭和44年1月29日より)

広告下部までよくご覧いただきたいのですが、

・スムーズなロータリー方式なので、騒音・振動がほとんどありません
・同じ能力のピストン式より4kg(当社比)も軽く、据え付けが楽
・冷房能力は一段と強力に、ハイスピードでムラなく冷やします
・エネルギーのロスがないため、電気代は従来より約10%(当社比)減少
・合理的な構造で部品の数も少ないので、故障の心配がありません

と、自動車顔負けの謳い文句が踊ります。

現在の広告基準で考えると、「エネルギーのロスがない」とか「故障の心配がありません」と言い切ってしまっている点に若干の危うさも覚えてしまいますが、それでもこの訴求文言はまるで自動車のようです。

そして、この東芝のロータリークーラーが掲載される前日のティーザー広告がまた面白く、

「ロータリークー」で寸止めされています(朝日新聞縮刷版昭和44年1月28日より)

この予告広告だけを見れば、真っ先に頭を過ぎるのはロータリークーペでしょう。既に販売されていたファミリアやルーチェのロータリークーペをフックに使ったティーザー広告となっています。

当時のロータリーエンジンにはまだネガな側面が強くなく、外形寸法が同等のレシプロ比で優に2倍以上の出力且つ無公害という薔薇色の未来を描かせてくれていました。

室内クーラーでこのように宣伝してしまうのですから、ロータリーが熱い時代だったことは疑いようがありません。

RX500はスーパーカーか?

スーパーカーとは何ぞやという定義には敢えて触れずに言い切りますが、RX500はスーパーカーだと考えています。

イベントが始まり、子供たちが列をなして楽しげに乗り込む様子を見ていると、

正しくスーパーカー然としています。何より、その後のスーパーカーブームの空気を吸って育ったであろう年代の方々も目を輝かせて乗り込んでいましたから、RX500はもうスーパーカーということで良いのだと思います。

さいごに

冒頭で「ロータリーロケットこと」と書き出しましたが、この表現は本来はRX-7(FD)に対して用いられます。しかし、

RX500のリアの造形を見ているとロケットのように思えたので、勝手にロータリーロケットに含めました。

ということで、ロータリーロケットにしてスーパーカーの

RX500でした。

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