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自動車用レザーシリーズ第六弾は、

アルピナのラバリナレザーです。おそらく、その吸い付くようなタッチ感については、自動車用レザーとして屈指の上質さを誇ります。

ラバリナレザーの素材と鞣し

ラバリナレザーの素材や鞣しについて各種資料をかき集めた結果、次の通りとなります。

・南ドイツ産の原皮である
・塩漬け保存されていないカウハイド(生後二年経過した牝牛)を使っている
・前鞣しがミネラル鞣しで再鞣が植物タンニン鞣しのコンビネーション鞣しである
・再鞣時に使われるタンニンはタラの外皮から抽出したタラタンニンである
・樽で染色されている
・染料は水溶性である
・フルグレインレザーである
・顔料も少し使っている

1つ目の南ドイツ産についてはメリノレザーの項目で詳しく触れたので省略しますが、やはりここでも改めてドイツ産の強さを認識させられます。

塩漬け保存されていないカウハイドの意味

塩というのは言わば防腐剤です。副産物としての原皮がタンナーに回ってきた際、それをある程度まとまった量になるまで保存する場合には塩漬けしないといけません。在庫がだぶつけばだぶつくほど、塩漬け期間が長くなり、鮮度も失われます。つまり、ラバリナレザーは鮮度の良い素材を使っているということです。

ただ、タンナーの方にお話をうかがったところ、現在では塩漬け保存しているタンナーは珍しいのではないかとのことでした。その方曰く、「そこまでだぶついてるタンナーは珍しい」とのことです。

そして、カウハイドはメス牛なので、同年齢のオスよりも薄く柔らかくなります。この段階でもう、ラバリナレザーが目指している方向性が垣間見えます。

ミネラル鞣しと植物タンニン鞣しのコンビネーション鞣しの意味

ミネラル鞣しとはミネラル塩を使って鞣す手法で、植物タンニン鞣しはその名の通り、植物から抽出したタンニンを使った鞣しです。クロム鞣しを選択していないことから、静かにノンクロムレザーであることを主張しています。

ノンクロムレザーは簡単に土に還りますが、クロム鞣しによるレザーは簡単には土に還りません。ノンクロムレザーは普通に廃棄できますが、クロムレザーは高温で焼却しないと有毒な六価クロムが発生してしまいます。

ノンクロムレザーにまつわるクリーンで安全で何となく清潔であるという印象がそのまま、ラバリナレザーにも当てはまります。

タラタンニンを使う意味

タラタンニン自体は一般的な鞣し剤ですが、耐光性に優れているので自動車に適したタンニンを選んでいるという意味なのでしょうか。あるいは、植物タンニン鞣しをより印象づけるために、わざわざタラの外皮から抽出していることまで公開しているのかもしれません。

BMWのi8の記事でも触れましたが、BMWもエコなイメージを強化するために、

オリーブから抽出したタンニンを展示していました。

その他の特徴

その他、樽、つまりドラムを使って水溶性の染料を染みこませる点や、セミアニリンレザーであること自体は特に珍しい手法ではありません。

これも以前の記事で触れましたが、セミアニリンレザーは顔料の割合まで定義されていませんので、顔料をベタ塗りしていてもそれはセミアニリンレザーを名乗れてしまいます。そういう曖昧さのリスクを嫌ってのことか、ラバリナレザーはセミアニリンという言葉は使わずに、「顔料を少し使う」という表現をもってセミアニリンであることを示しています。

また、最近は自動車業界にセミアニリンレザーが増えてきているので、ピンからキリまで「セミアニリン」と一緒くたにされないように、敢えてセミアニリンという言葉を回避しているのかもしれません。

次のコニャックのラバリナレザーならわかりやすいのですが、

クリックして拡大すると随所に若干の透明感すら垣間見えます。顔料はごく僅かでしょう。セミアニリンレザーが本来目指していた染料独自の透明感ある色味が発揮されています。

ラバリナレザーは

色や

銀面の表情が

それぞれ

独特ですが、そのしっとりとした感触は統一されています。保存状況も影響しているのでしょうか。

いくら上質なレザーであっても、サンプルの保管状況が悪ければ手に取ったときにやや残念な思いをすることがあります。毎日のように直射日光を浴びていそうな場所に吊されたレザーサンプルを手にし、「本当はもっとしっとりとした手触りなんだろうな」と思ってしまうこともしばしばあります。

しかし、ラバリナレザーは保管状況も抜かりないようでした。

耐久性・耐摩耗性

一方で、アルピナの方が開口一番に仰っていたのが、耐久性の点で凄くデリケートだということです。

一般的に、レザーの耐久性と風合い、耐久性と吸い付くような質感は両立させづらいです。自動車用レザーは特に摩擦や紫外線への対策で、表皮に色々と盛られています。どれだけ軟化処理をしても、触感という難しい感覚を自在に操るのは困難となります。

日常的にアルピナに接しているアルピナの方自身が耐久性に関しては太鼓判を押せないと言うくらいなので、本当にギリギリのラインを攻めた結果での上質さなのでしょう。

さいごに

ラバリナレザーについては、理屈でどうこう考えるよりも実際に触ってみたほうが話は早いかと思います。鞣しの各工程で一貫してタッチ感の上質さを追求しているようなレザーなので、

まさに一触の価値ありです。

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